人の高齢化社会については随分前から話題になっていますが、犬も高齢化社会を迎えています。近年では、犬の飼育総数の4分の1以上が10歳以上の高齢犬で、平均寿命は14歳代に延びました(一般社団法人ペットフード協会のデータ)。高齢化により病気も多様化しており、がん、心臓病、腎臓病、認知症などが増えています。高齢犬では病気の治療選択肢も単純ではありません。高齢でも積極的な治療を行えることもありますし、病気の併発や老化が進んでいて緩和ケアのみを選択することもあります。高齢期の原因治療をどこまで行うかは患者の病態や家族の希望によりますが、緩和ケアは生活の質の向上や維持には大切であり、必ず行う治療です。
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高齢期は介護の問題も生じます。四肢麻痺や認知症などの神経の病気や老衰期だけでなく、がんの末期などにも介護が必要になります。家族の協力が得られるようであれば協力してケアしていくのが理想的ですが、仕事や生活サイクルの都合上難しかったり、飼主も高齢であったり病気であったりで、高齢犬の介護が十分にできない場合もあるでしょう。そういった場合は、動物病院やペット関連施設で行う介護サポートを利用することをおすすめします。介護には多くの時間や労力を要するため、患者を一時的に預かって介護を行い家族の負担を軽くするレスパイトケアも大事な緩和ケアの1つであると考えています(レスパイトは息抜きの意味)。