口腔内には多くの種類の細菌が存在しますが、犬と人の歯周病の原因となる主な細菌類としてポルフィロモナスが知られています。人の口腔ではポルフィロモナス・ジンジバリス、犬の口腔ではポルフィロモナス・グラエ(以下グラエ菌)という細菌です。近年の研究では、70%の犬がグラエ菌を保有していること、グラエ菌を保有している犬の飼主のうち16%がグラエ菌を保有していること、などが報告されています。この結果は、犬の口腔内細菌を飼主が保有している、つまりグラエ菌が犬から人にうつったことを意味しています。犬との触れ合いはとても大切ですが一定の注意は必要です。犬に口を舐めさせる(犬とキスをする)、口移しや食器を共有して食事を与える、などの不適切なコミュニケーションは避け、犬と触れ合った後は手を洗いましょう。そして犬の口腔内の状態に気を配りましょう。口腔ケアを怠り、歯垢歯石の付着と歯周病が進行した犬の口腔内には、著しい数の細菌が存在します。歯周病により犬の健康が侵されることはもちろんですが、犬の口腔内細菌が人体に悪影響を及ぼすこともあります。幼児、高齢者、闘病中の方など、免疫力が弱い方が一緒に生活する場合は特に注意が必要です。犬の口腔内を綺麗に保つことは、犬のためだけでなく、人と暮らす上でとても重要なのです。
※犬の歯周病および口腔ケアに関する情報は、「犬に多い歯周病」「犬の歯周病治療」のページも併せてご参照ください。